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「貴女は、誰?」

『χの悲劇』を読んで。

学生時代に出会って以来作品を追い続けている森博嗣の新作。
『χ(カイ)の悲劇』を読み終えた。

小さな少女が一人立っている。
島田は前に進もうとした。
柱は後方へ移動し、少女は立ったまま、近づいてくる。
白いドレスを着て。
目は青く。
黒髪に白いリボン。
島田はその前に跪いた。
「貴女は、誰?」
それを尋ねたのは、自分なのか、それとも少女なのか、分からなかった。
〜『χの悲劇』本文より

作品中の世界観はちょっと未来っぽくて実現してることは今巷でもてはやされているIoTに近いなぁと思った。
そしてそれを実現しているのが、10年以上前に行われた真賀田四季博士のシステム設計が基本となっているらしい。
10年以上前に基本システムに無駄と思われる拡張部分を予め設計・用意しておき、時代のニーズに応じて順次対応してくなんて設計は本当に神とか呼ばれるレベルの先見性が必要だ。
PaaSとかIaaSとかクラウドコンピューティングとか仕事柄触れることの多いキーワード。
ここ数年企業のトレンドになっていることがどれほど想定されたうえで真賀田四季博士が設計を行っていたのだろうと想像してみると真賀田四季博士の天才っぷりが前より分かりやすくなった気がした。

登場人物の正体とかは他のブログで色々書かれているのでそちらを参照していただくとして…。
一番気になるのは真賀田四季博士は何処にいるのか?ということ。
この小説の終盤で出会えた?のは果たして本人なのか…。
『四季 秋』から現実世界にはもういないだろう、ということを犀川先生たちが感じていたが今回の作品を読んでクラウド上の存在になったということなのだろうかと思った。
折しもディープラーニングなどの隆盛でシンギュラリティが注目をあつめる中、彼女がそれらの発展形だとすると時事にマッチして面白い。

作品群全体の時系列については、今回の作品で『四季 冬』の序盤に近づいたのかなぁ。
読めば読むほど謎が深まっていくGシリーズ。
後二作で終わりらしいけれどすべての謎が明かされるのだろうか?
最後のパラグラフが一番印象に残ったので部分をぼかして引用して締めくくることにする。

のちに、明らかになったことだが、この臓器移植協会は、カナダには実在しない。XXXXの遺体は現在も行方不明である。享年八十九歳だった。
〜『χの悲劇』本文より

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