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『ここは退屈迎えに来て』を読んで。

どこでどの記事を読んだのか、それとも誰かに進められたのか…。
購買理由が思い出せないのだがAmazonで届いたのを読み終える。

そばにいても離れていても、私の心はいつも君を呼んでいる―。都会からUターンした30歳、結婚相談所に駆け込む親友同士、売れ残りの男子としぶしぶ寝る23歳、処女喪失に奔走する女子高生…ありふれた地方都市で、どこまでも続く日常を生きる8人の女の子。居場所を求める繊細な心模様を、クールな筆致で鮮やかに描いた心潤う連作小説。

私は本籍こそ熊本にあったが行ったことはないし、海外で生まれて依頼ほとんど海外で転々として育ってきたのでいわゆる”ありふれた日本の地方都市”ってやつがわからない。
小さい頃に好きだった『探検ぼくのまち』とかテレビ越しで繰り広げられる世界でしか知らない。3月11日の地震があった時は、避難のため実家に帰る人達を横目に『あ~こういう時帰る場所ってどこになるんだろう』とか思っていた。なので共感するタイプの読書にはならないかもしれないなと思っていた。
だが、

都会に出てから本当に生きられる気がしている。人生がはじまると思っている。
都会に出て、誰の力も借りずに、自由にのびのび生きたい。
ちょうどまなみ先生が、あの深緑色のオプティのハンドルを握って、好きな音楽をかけ、ギュゥンとアクセルを踏み込むように――あんなふうに自分の船を自分で漕ぎたい。
――「東京、二十歳。」より

ドイツの中学から高校受験に合格し日本の高校に入学、寮生活を始めようとしていたとき、こんな感情だったかもしれない。
言葉が何の苦労もなく伝わり、やりたいと思ったことが制限かかることがなくやれるーーー。
本屋に行って読みたい本を読み、美味しそうと思ったスナックをすぐに買える。
図書館や水族館にこもって一日を過ごすことだって。
行きたいと思った場所でも大して苦労すること無く調べられて、行くことができる。
…それから20年近くが経つわけだが、果たして私は自分の船を自分で漕いでいられているだろうかと思った。

内容はオムニバス小説というのか、とある地方都市における様々な人が登場しそれぞれの日常を述べる内容。最初の2話で『椎名』が登場することで彼を中心にしたゲームの”街”みたいな小説かなぁと思ったがそうではなかった。時期もバラバラだし、登場する『椎名』は脇役でしか無く、彼を中心として複数の話が収束していくようなことは全くなかった。それぞれの話は必ずと言っていいほど『椎名』が登場するため微妙にリンクしているが、それも些細なもの。様々な立場の人の様々な日常。それを淡々と読む感じの小説だった。

私の姉が本を読むのが余り好きではなく、本を読みまくっていた私に事あるごとに聞いてきた。『本を読むのは何が楽しいのか?』と。『色々な人の人生、考え方に触れられるのが楽しい』と云うのが私の応えで、そういう意味ではこの小説は人によっては淡々と読むだけで結局なんなんだ、という疑問は間違いなく残るんだろうけれど私はなんとなく好きといえる本だった。

巻末の解説によると、ロードサイド小説というジャンルらしい。この本がロードサイド小説として傑作なのかどうかは私にはわからない。
でも他にもこういうジャンルの本を読んでみたいな、と思う。

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